「筋トレしてるのに、なかなか痩せない…」「もっと効率的に筋肉を増やしたい」そう感じている人は、もしかしたら「消費カロリー」を正しく把握できていないかもしれません。
ボディメイクをするためには、やみくもに食事制限をしたり、たくさん食べれば良いというわけではありません。
自分に必要なエネルギー量を計算し、ある程度正確に知ることが重要です。
この記事では、ハリス・ベネディクトの式という、個人の消費カロリーを算出するための便利な計算式を解説します。
なぜ消費カロリーを知ることが重要なのか?
筋トレにおける「増量」や「減量」は、単に体重を増減させることではありません。
- 増量(バルクアップ):筋肉を増やし、体を大きくすること。
- 減量(カッティング):筋肉を維持しつつ、体脂肪を減らすこと。
どちらの目的を達成するためにも、「摂取カロリー」と「消費カロリー」のバランスが鍵を握ります。
- 増量したい場合:摂取カロリー > 消費カロリー(カロリーオーバー)
- 減量したい場合:摂取カロリー < 消費カロリー(カロリー赤字)
しかし、自分の消費カロリーが分からなければ、どれくらいのカロリーを摂れば良いのかが不明瞭になり、計画が曖昧になってしまいます。
そこで役立つのが、ハリス・ベネディクトの式なのです!
ハリス・ベネディクトの式とは?
ハリス・ベネディクトの式は、私たちが1日に消費する総カロリーを計算するための古典的かつ広く用いられる計算式の一つです。
主に以下の二つの要素から成り立っています。
- 基礎代謝量(BMR:Basal Metabolic Rate):
私たちが生きていく上で最低限必要なエネルギー量のこと。心臓を動かしたり、呼吸をしたり、体温を維持したりと、何もせずじっとしていても消費されるカロリーです。 - 身体活動レベル(PAL:Physical Activity Level):
基礎代謝量に加えて、日常生活での活動量(通勤、家事、仕事、そして筋トレなどの運動)によって消費されるエネルギー量を考慮したものです。
ハリス・ベネディクトの式を使って計算することで、体格や活動量に応じた、より正確な1日の総消費カロリー(TDEE:Total Daily Energy Expenditure)を算出できます!
ハリス・ベネディクトの式|計算方法
では、実際にあなたの1日の総消費カロリーを計算してみましょう。
▶︎ステップ1:基礎代謝量(BMR)を計算する
ハリス・ベネディクトの式は、性別によって計算式が異なります。
- 男性のBMR66.5+(13.75×体重kg)+(5.00×身長cm)−(6.78×年齢)
- 女性のBMR655.1+(9.56×体重kg)+(1.85×身長cm)−(4.68×年齢)
例:
- 男性、30歳、体重70kg、身長175cmの場合66.5+(13.75×70)+(5.00×175)−(6.78×30)=66.5+962.5+875−203.4=1700.6kcal
- 女性、28歳、体重55kg、身長160cmの場合655.1+(9.56×55)+(1.85×160)−(4.68×28)=655.1+525.8+296−131.04=1345.86kcal
▶︎ステップ2:身体活動レベル(PAL)を考慮し、1日の総消費カロリー(TDEE)を計算する
ステップ1で算出したあなたの基礎代謝量(BMR)に、普段の活動レベルに応じた係数を掛け合わせます。
- 活動レベルが低い(運動をほとんどしない、デスクワーク中心): BMR 1.2
- 活動レベルがやや低い(週1〜3回程度の軽い運動): BMR 1.375
- 活動レベルが中程度(週3〜5回程度の適度な運動、筋トレも含む): BMR 1.55
- 活動レベルが高い(週6〜7回程度の激しい運動、肉体労働): BMR 1.725
- 活動レベルが非常に高い(毎日激しい運動、高負荷のトレーニング、重労働): BMR 1.9
例(上記の男性の場合):
- BMRが1700.6kcalで、週3回筋トレをしている(活動レベル中程度)の場合
これが、あなたの1日の総消費カロリー(TDEE)の目安となります。
厚生労働省の基礎代謝量基準値も参考に
ハリス・ベネディクトの式は欧米のデータに基づいており、日本人の体格や生活習慣には必ずしも完璧にフィットするわけではないという指摘もあります。
参考として、厚生労働省が発表している日本人の年齢・性別ごとの基礎代謝量基準値も確認しておくと良いでしょう。
基礎代謝基準値は、体重1kgあたりの基礎代謝量の目安です。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
年齢 | 基礎代謝基準値 (kcal/kg体重/日) | 参照体重 (kg) | 基礎代謝量(BMR) (kcal/日) | 基礎代謝基準値 (kcal/kg体重/日) | 参照体重 (kg) | 基礎代謝量(BMR) (kcal/日) |
1 – 2 | 61.0 | 11.5 | 700 | 59.7 | 11.0 | 660 |
3 – 5 | 54.8 | 16.5 | 900 | 52.2 | 16.1 | 840 |
6 – 7 | 44.3 | 22.2 | 980 | 41.9 | 21.9 | 920 |
8 – 9 | 40.8 | 28.0 | 1140 | 38.3 | 27.4 | 1050 |
10 – 11 | 37.4 | 35.6 | 1330 | 34.8 | 36.3 | 1260 |
12 – 14 | 31.0 | 49.0 | 1520 | 29.6 | 47.5 | 1410 |
15 – 17 | 27.0 | 59.7 | 1610 | 25.3 | 51.9 | 1310 |
18 – 29 | 23.7 | 63.0 | 1490 | 22.1 | 51.0 | 1130 |
30 – 49 | 22.5 | 70.0 | 1570 | 21.9 | 53.3 | 1170 |
50 – 64 | 21.8 | 69.1 | 1510 | 20.7 | 54.0 | 1120 |
65 – 74 | 21.6 | 64.4 | 1390 | 20.7 | 52.6 | 1090 |
75以上 | 21.5 | 61.0 | 1310 | 20.7 | 49.3 | 1020 |
※本表は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書」の基礎代謝量基準値をもとに作成しています。(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html)
▶︎ハリス・ベネディクトの式との比較と活用
ハリス・ベネディクトの式で算出したあなたのBMR(基礎代謝量)と、この厚生労働省の表から読み取れるBMR(「基礎代謝基準値」×「あなたの体重」)を比較してみましょう。
- 二つの数値が近い場合:あなたの基礎代謝量は、一般的な傾向に近いと考えて良いでしょう。
- ハリス・ベネディクトの式の数値が高い場合:あなたの身長や体重が、その年齢の平均よりも大きい可能性があります。
- ハリス・ベネディクトの式の数値が低い場合:あなたの身長や体重が、その年齢の平均よりも小さい可能性があります。
どちらの数値もあくまで目安ですが、これらの情報を総合的に見て、あなたの体に必要な基礎代謝量をより正確にイメージすることができます。
ハリス・ベネディクトの式を増量・減量にどう活かすか?
あなたの総消費カロリー(TDEE)が分かれば、いよいよ具体的な食事計画を立てることができます。
▶︎増量(バルクアップ)したい場合
総消費カロリー(TDEE)に加えて、1日あたり300〜500kcal程度のカロリーをプラスして摂取することを目指しましょう。
- 例(上記の男性の場合):
この範囲で、炭水化物、タンパク質、良質な脂質をバランス良く摂ることを意識してください。
▶︎減量(カッティング)したい場合
総消費カロリー(TDEE)から、1日あたり300〜500kcal程度のカロリーをマイナスして摂取することを目指しましょう。
- 例(上記の男性の場合):
この範囲で、特にタンパク質をしっかり摂り(体重1kgあたり1.6〜2g目安)、筋肉の減少を抑えながら体脂肪を落とすことを意識しましょう。
ハリス・ベネディクトの式 活用のポイントと注意点
ハリス・ベネディクトの式は、トレーニングライフを送る上でとても活用的ですが、いくつか注意が必要なところがあります。
- あくまで目安:
ハリス・ベネディクトの式は非常に有用ですが、計算結果はあくまで目安です。個人の代謝能力、腸内環境、睡眠の質、ストレスレベルなどによって実際の消費カロリーは変動します。 - 定期的な見直し:
体重や体脂肪率の変化を見ながら、週に1回程度は計算結果と実際の摂取カロリーを見直し、調整していくことが大切です。 - 「食べるもの」の質も重要:
カロリーばかりに注目せず、タンパク質、炭水化物、脂質のバランス(PFCバランス)や、ビタミン、ミネラルなどの微量栄養素も意識した「クリーンな食事」を心がけましょう。 - アプリを活用:
MyFitnessPalなどの栄養管理アプリを使えば、食事の記録とカロリー計算が簡単に行えます。
まとめ:あなたの体は、あなたが食べたものでできている
体は筋トレと食べたもので作られていきます。
ハリス・ベネディクトの式を活用することで、自分の体に本当に必要なエネルギー量を理解し、より効率的な増量・減量計画を立てることができます!
今日からあなたの消費カロリーを計算し、目標達成に向けた食事摂取を考えてみませんか?
続けることで、必ず結果はついてきますよ!